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No.5
2000年6月8日
水虫について
丹野皮膚科医院 丹野和穂

 
水虫は医学的名称は「足白癬」で、白癬菌(糸状菌、真菌)というカビの菌が皮膚に寄生して生ずる皮膚病です。ちなみにこのカビの菌が足以外の部位に生じたものが、俗に云う「たむし」です。余談ですが、子供の顔にできる白っぽいカサカサした丸い発疹を「たむし」と思っている方が多いのですが、これは白癬菌で生ずる「たむし」ではありません。白色ひこう疹という何ら心配のないものです。 
 水虫は白癬菌が皮膚の一番表面の角質層という部分に寄生し、角質層を構成している蛋白質のケラチンを栄養源にして生きています。カビですから湿気を好み、汗で足が蒸れる夏に増殖して悪くなります。湿度の高い日本では西洋式の靴は本来合わない履物で、明治以後靴を履くようになってから水虫が増加、悪化したものと思います。冬は乾燥しますので菌量が少なくなり症状は治まりますが、菌自体はしっかり生きており、翌年夏にまた増えて症状を出します。ですから水虫を根治させるにはこの冬の期間にきっちりと薬を塗り続けることが大切です。
 白癬菌はばい菌ですから、体はこれを排除しようと白血球が皮膚表面に集まってきて、菌を攻撃し強い皮膚炎を生じます。赤くなり、水ぶくれになり、それが破れてただれたり、皮がむけたりして猛烈に痒くなります。化膿菌に感染して足が痛く腫れあがることもあります。慢性になると角質が厚くなって表面がカサカサ剥けた状態にな
り、痒くもなく、一見水虫ではないような感じになります。
 水虫の治療は抗真菌外用剤を塗ることが基本ですが、大事なことは毎日根気よく塗りつづけることです。症状が治まってもその時点では菌はまだ生き残っていますから、それから最低2〜3ヶ月は塗りつづけてください。できれば冬の期間、翌年春ころまで塗りつづければ理想的です。上記の皮膚炎の症状が強いときは抗真菌剤を塗る
だけではだめで、かえって悪化することもありますので、抗真菌剤と種種の抗炎症外用剤を併用して治療しますので、専門医に任せたほうが良いでしょう。また爪に菌が入ってなる爪白癬(爪が黄色っぽく濁る)の治療は抗真菌剤の内服が必要です。以前はグリセオフルビンという薬を1年以上内服が必要でしたが、このごろはイトラコナ
ゾール、テルビナフィンなど効きの良い薬ができて、数ヶ月の内服で治癒可能です。
 水虫の伝染を防ぐには(特に家族内で)履物、足拭き、タオルなどの共用は避け、掃除をこまめにやります。また白癬菌は皮膚表面に付着しても、角質層内に侵入するには48時間ほど時間がかかりますので、1日1回石鹸で足を洗えば菌は落ちて、発病しません。

 水虫は治ります。治るためのキーワードは「根気」です。


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