No.3
2000年1月20日
脳卒中にならないために
白河厚生総合病院 脳神経外科 永山 徹

 「中気」あるいは「中風」と表現される脳卒中ですが、漢字では「脳に、にわかに中(あた)る」と書きます。死亡率は癌に次ぐ2位(1996年)で、先程まで元気だった人が突然倒れ死に到る場合や、意識障害・半身麻痺・言語障害などを残し寝たきりになることも多く重篤な病気です。原因は、脳へ行く血管の障害です。(1)血管が詰まって脳細胞に十分な血液が行かないため脳が障害される脳梗塞、(2)血管が切れて脳が壊れる脳内出血、(3)脳の動脈にできた瘤が破裂して出血するくも膜下出血などがあります。どうすれば予防できるのでしょうか。頻度の多い病気の順に説明します。

 (1)脳梗塞ですが、血管の詰まり方の違いにより、脳血栓症と脳塞栓症とに分けられます。6〜7割は脳血栓症で「動脈硬化」を基礎とし年々増加しています。その危険因子は、高血圧、糖尿病、コレステロ−ルや中性脂肪が高くなる高脂血症、喫煙などで、予防はこれら危険因子の適切な治療です。他方、老人に多い脳梗塞の原因は「脱水」です。夏の暑い時、冬でも熱い電気毛布を使って寝た時など、多量の発汗により生じます。血管内水分の減少で血液の粘稠性が増し、血流が悪くなるため血管が閉塞します。「コップ一杯の水」といった水分の補給が予防につながります。

 (2)脳溢血といわれる脳内出血ですが、増える脳梗塞と対照的に、数十年来徐々に減少傾向です。高血圧治療の普及と、栄養状態の改善による血管壁形成の正常化に起因しています。ただ、高血圧の管理が不十分な方、また肝臓は出血を止める働きのある血液凝固因子を作りますが過度の飲酒などで肝機能の悪い方は要注意です。

 (3)くも膜下出血は、現在でも発症すれば約半数が死亡します。原因の9割は脳動脈瘤の破裂ですが、破裂がひどく出血量が多い程重症になります。動脈瘤は再破裂を繰り返すのが特徴で、再破裂による脳の破壊を防止するための手術が行われます。特徴的な症状である「突然の激しい頭痛」があれば、専門医への受診
が最善です。

 最後に、最近普及してきた「脳ドック」を紹介します。目的は、MRI装置を用い外来で脳及び脳の血管を検査し、脳卒中を未然に防ぐことです。血縁2親等以内に脳動脈瘤の方がいる人では通常人の倍以上の確率で動脈瘤が発見され、要注意です。MRI検査は、脳動脈瘤だけでなく血管閉塞等の診断にも有効です。希望される方は、当院も含め脳神経外科の専門医へ相談してみては如何でしょうか。

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